早期米の稲穂がたわわに実る頃。安全祈願と製麹から始まる焼酎づくり。
安全祈願祭が執り行われると聞いて、酒蔵に足を運んだのは8月1日。小鹿酒造の周辺に広がる田んぼには黄金色に色づいた早期米の稲穂がたたわに実り、収穫を今か今かと待っているようでした。安全祈願祭が行われる時期について水上さんに伺ったところ「本格的に芋の収穫が始まる8月下旬を前に、まずは米麹の仕込みが始まるんです。その麹の仕込みが始まるのがちょうど今頃。それに合わせて、一年の安全と美味しい焼酎ができますようにと願って安全祈願祭を行います。ちなみに『小鹿の郷』という焼酎は、大隅地域一帯の早期米の『にかごめ(新米)』を使うことにこだわっているんですよ」と教えてくださいました。
祭事が始まると同時に強く吹く風。神様の御通り!?
祭事が行われる工場の前に案内されると、40名以上の社員さんたちがズラリ勢揃い。安全祈願祭は特別な出張等を除く原則全社員と、さつま芋の生産組合の方や運送会社の方が出席されるそう。社員も関連会社の方々も気持ちを一つにして祭事に臨みます。小鹿酒造から1kmほどのところにある鵜戸神社から神主さんをお迎えし、いよいよ祭事が始まる‥‥というときにパラパラと降り出した雨。祝詞が読み上げられると風も強くなってきました。水上さん曰く「毎年突風が吹くんですよ。神様が通って行かれるのかなぁって縁起の良いものと思っています。雨は‥取材が入ると降るんですよ、誰が連れてくるのかな?(笑)」。
広い工場内のあちこちをお清め。ちゃっかり工場見学気分も。
祝詞が読み上げられたあと、さつま芋の選別場や仕込み場、貯蔵庫など、広い工場内のあちこちへ神主さんが足を運び、榊を振るったり塩やお酒を撒いたりしてお清めをしていました。工場に伺ったのが2度目の私。不覚にも祭事の取材で工場の広さを目の当たりにすることに。お祈りの気持ちはしっかり持ちつつ、ここは何をする場所だろう?大きい建物だな、などと終始キョロキョロとしておりました(笑)。ちなみに、ちょうどこの日は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために一時休止していた工場見学が再開された日でもありました。どなたでも気軽に見学させていただけるので、ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせを!(小鹿酒造株式会社 TEL 0994-58-7171)
焼酎にまつわる神社のお話。日本最古の「焼酎」の文字は大工さんの落書き!
工場のお清めが済んだら、代表者による玉串奉奠。一人ずつ、神妙な面持ちで玉串を神棚にお供えしていきます。祭事を見ていて、ふと、焼酎にまつわる神社ってあるのかな?と気になって、あとから水上さんに尋ねてみました。焼酎好きに有名なのは、大口市の郡山八幡神社だそう。1559年に本殿建築に関わった大工が「ここの住職は一度も焼酎を振る舞ってくれずケチだった」と落書きを残していて、これが「焼酎」の文字として日本最古のものなんだとか。400年以上も前から、焼酎は振る舞うもの、疲れを癒やすものという位置づけで親しまれていたんですね!他にも、南さつま市にはお酒の神様を御神祭とする竹屋(たかや)神社があるそう。焼酎の歴史を振り返りながらの神社巡りも楽しそうです。
コロナ禍以前は安全祈願祭の後は大宴会!来年に期待を寄せて―。
ところで、大隅の各地域に存在する「小鹿会」って知ってますか?「小鹿の美味しさをもっと広めたい!」という思いで出来た焼酎好きの呑ん方チームで、各地の居酒屋や飲食店で度々集まっては小鹿を酌み交わしているんだそう。まだ小鹿が今ほどメジャーではなかった時代から活動していて、今や大隅エリアの居酒屋でキープボトルが当たり前に見られるようになったのは彼らの貢献があったからかもしれません。コロナ禍以前の安全祈願祭は、祭事が済んだらそのまま大宴会の流れだったそう。「小鹿会」の支部長さんたちも招いて、それはそれは賑やかだったそうですよ。今年はコロナ明けとは言え様子を見て宴会は控えたそうですが、「来年以降はまた賑やかにみなさんと呑ん方したいなぁ」と水上さん。焼酎づくりに関わる全ての人達の安全を祈りつつ、今年も美味しい焼酎が出来上がるように、そして小鹿を囲んでたくさんの交流が生まれるように、願いの止まない一日でした。